東京地方裁判所 昭和49年(借チ)1036号 決定 1975年3月20日
申立人
田沢義親
右代理人
奥川貴弥
外二名
相手方
鈴木康之
右代理人
新井藤作
外一名
主文
申立人が別紙目録記載の増築をすることを許可する。
申立人は相手方に対し、金一〇万四〇〇〇円を支払え。
理由
(申立の要旨)
一 申立人は、昭和四三年一〇月三〇日、相手方から別紙目録記載の土地(以下、本件土地という。)を、非堅固建物の所有を目的とし、地上建物を増改築するときは相手方の承諾を要する旨の特約付で賃借し、同地上に同目録記載の建物(以下、本件建物という。)を所有している。
二 申立人は、右建物に別紙目録記載の増築をすることを計画しているが、右増築が本件土地の通常の利用上相当であるにもかかわらず、相手方の承諾が得られない。
三 よつて、右増築につき相手方の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(当裁判所の判断)
一本件資料によれば、本件申立は適法と認められ、かつ、本件増築は本件土地の通常の利用上相当と認められるから、本件申立はこれを認容すべきである。
二そこで、付随処分について考えるに、本件増築により申立人は本件土地を従前より効率的に使用できる利益を受けることとなるので、本件増築を許可するに当り、当事者間の利益の衡平を図るため、申立人に対し、財産上の給付を命ずるのが相当である。
右の財産上の給付の額について、いろいろの考え方があり得るが、当裁判所は、通常の土地利用形態での全面改築の場合は更地価格の三パーセントを一応の基準とし、一部増改築の場合はその規模、内容等に応じてこれを減額して算定するのが相当と考える。
しかるところ、本件増築の規模・内容、本件賃貸借の残存期間と期間更新の蓋然性、鑑定委員会の意見、その他本件資料にあらわれた諸般の事情を考慮すると、本件においては、本件土地のうち増築後の本件建物の敷地として利用される111.50平方メートル(本件土地から私道に提供されている部分を除いたもの)の更地価格一六八六万五〇〇〇円(3.3平方メートル当り五〇万円)の三パーセントに増築部分の床面積19.28平方メートルを乗じて得た額を増築後の本件建物の床面積93.91平方メートルで除して得た額約一〇万四〇〇〇円をもつて財産上の給付額とするのが相当である。
なお、賃料については、昭和五〇年一月から一二月までは3.3平方メートル当り月額一四〇円、同五一年一月から一二月までは右同様一五〇円とする旨の合意が成立していることが当事者間に争いがなく、そのため当事者双方とも本件における付随処分としての賃料額の改定は希望しない旨述べているので、本件増築許可に当つてはこれに何らの変更を加えないこととする。
三よつて、主文のとおり決定する。
(根本真)
<別紙目録省略>